「遺産の分け方は長男に任せる」と遺言に書いても大丈夫?

母は年を取るにつれ、何にせよ決めることが億劫になってきました。
自分の相続のことも気になれど、誰に財産をあげるのか考えるのが億劫で、「長男である自分に一任する」と言っています。

 

 
これ、そのまま遺言書に書いてもらっても大丈夫ですか?
遺言書では、自分の遺産をどう分けるかを自分で決めて書くのが一般的ですが、そうではなくて、自分の信頼できる誰かに決めてもらいたいという人もいますよね。

 

その場合も、遺言により、財産の分け方を人に委ねることができます。

これを相続分の指定の委託といいます。

委託を受けた人(受託者)は、遺言者が亡くなった後、遺産をどのような割合で分けるかを決めることができます。

この受託者が第三者であれば特に問題ないのですが、今回のご相談のように、相続人を受託者にしたいときは注意が必要です。

相続人が相続分の指定の委託を受けることができるかどうかは、学説が分かれているそうですが、多数説によると、
遺言の中で、受託者となる相続人の相続分を指定した上で残りの相続分について指定を委託するのは問題ないとされています。

したがって、今回のように、息子さんがお母様の遺言で相続分の指定の委託を受けたいときには、以下のような文言で書くのがよいでしょう。

遺言者は長男・山田太郎の相続分を1/2と指定する。
他の相続人の相続分については、各相続分の指定をすることを太郎に委託する。
こう書いておけば、お母様の相続が発生したとき、息子さんは財産の1/2を相続した上で、残りの1/2について他の相続人にどのような割合で取得させるかを受託者である息子さんが決めることができます。
また、遺言で相続分の指定の委託をする場合、あわせて相続分の指定に関する基本方針を書いておくこともできます。
たとえば、「遺言者は、本遺言において相続分の指定の委託を受けた者が、各相続人の相続分が実質的に公平になるように、各相続分を指定することを希望する」といった文言が考えられます。

これは本文に書いても付言事項に書いてもどちらでも構いません。受託者が他の相続人の相続分を決める際の指針としても役立ちますし、遺言者の意図がはっきりするので相続人同士でもめるのを回避できるかもしれません。
なお、この「相続分の指定の委託」でできるのは、相続割合の指定の委託のみです。いくら委託を受けているといっても、具体的な財産について、それを取得させる人を決めることまではできませんのでご注意ください。
 
原則として、法定相続分の指定に従って個々の財産を具体的にどう分けるのかは、相続人が話し合って決める必要がありますよ。