親に遺言書を無理矢理書かせたら?

遺言書は基本的に遺言書を書くご本人の自由意志により書かれるものです。

しかし、自分に有利な内容で遺言書を書いて欲しいと子が望んでいるケースもよくあります。

もちろん遺言者である親の思いも同じであれば何ら問題ありません。でも、親の意思に反して無理矢理書かせるような場合はどうなのでしょうか?知っておいて欲しいのは、民法が定める次の決まりです。

相続人となるべき者が、詐欺や脅迫によって遺言書を書かせた場合などは、その者は相続人としての資格を失う

これを相続欠格といい、相続欠格となった者を相続欠格者といいます。


詐欺や脅迫によって無理矢理、親に遺言をさせたり、変更させる、あるいは遺言書を偽造や変造したりすることは相続欠格事由にあたります。

つまり、詐欺や脅迫のような形で自分に有利な遺言書を親に無理矢理書かせ、親の死後、そのことが問題になった場合、相続人の資格が失われ、自分に有利どころか、財産を一切相続できなくなる可能性があるのです。これでは、親に遺言書を無理矢理書かせた意味がありませんね。

親に遺言書を書いてもらう際には、あくまでも親の意思を尊重し、「詐欺や脅迫によって遺言書を書かされたのではないか?」と後で他の相続人から疑われるようなことがないように注意しましょう。

ちなみに、遺言書を隠す行為も相続欠格事由となります。遺言者が亡くなって遺言書を開けてみたら自分に不利な内容が書かれてた・・・、というときも、遺言書をこっそり処分したり、書き換えたりするのは厳禁です。もしそれが明るみになったら、相続欠格者となり、一切の財産を受け取れなくなります。

また、欠格と同じく相続権を失わせるものとして、廃除という規定もあります。

親を虐待したり、親に重大な侮辱を加えた子、あるいは著しい非行があった子に対して、親は遺言で廃除の意思表示をすることにより、その子の相続権を失わせることができます。具体的には以下のような文言を遺言で書きます。

遺言者は、長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生まれ)について、平成〇年ごろから遺言者に対する度重なる虐待があったことから、相続人から廃除する。

遺言の執行時には親は亡くなっているので、実際には親ではなく遺言執行者が家庭裁判所に廃除を申立てます。また、廃除が認められるかどうかは、個々の行為ごとに判所の判断を仰ぐことになります。

遺言書は新たに遺言書を書くことで撤回できます。つまり、親を虐待しているような子が、自分に有利な遺言書を無理矢理書かせたとしても、その後に親が別の遺言書を作り、その中で廃除を遺言すれば、その子は相続人から外される可能性もあるのです。

 
遺言書はあくまでも遺言者ご本人の考えで書くもの。
本人の意志に反して、無理矢理書かせるようなことは避けるべきです。
相続人が欠格や廃除で相続権を失ったとしても、欠格者や廃除者の子らには代襲相続が認められ、相続人になることができます。
これは、欠格者や廃除者の子ら自身が脅迫や非行を行ったわけではなく、相続権を奪われるような非がないからです。
欠格とされると相続できませんが、自分に子がいればその子が相続できるので、罰則としてはちょっと甘いような気もしますね。