遺言書は法律文書の一種です。
なので自由に好き勝手書いてよいというわけではなく、法の定めに則って書かないと無効となります。
遺言書の決まり事には色々ありますが、ここでは最も基本となる遺言の原則をご紹介します。
代理禁止の原則
遺言は遺言者本人がなすべきという原則です。
第三者が遺言を代理ですることはできません。代理でした遺言無効となります。
これは、遺言が遺言者の最終意思であり、遺言者の意思を尊重するためです。
ただし例外的に、第三者への委託が認められているものもいくつかあります。
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定
- 遺言執行者の指定
方式遵守の原則
遺言は民法の定める方式に従ってなされなければならないという原則です。
遺言には厳格な方式が求められます。
法的形式に従っていない遺言は無効であり、法的効果を持ちません。
これは、遺言が死後に効力の生じる意思表示であることから、遺言の存在と内容をはっきりさせることで遺言者の真意を確保し、偽造や変造を防止するためです。
民法が定める遺言の方式
普通方式
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
特別方式
- 応急者遺言
- 隔絶地遺言
共同遺言禁止の原則
2人以上の人が同じ証書で作った遺言は無効です。
共同遺言の禁止の原則の趣旨
- 遺言者の自由意志を確保する
- 遺言撤回の自由を確保する
- 一方の遺言の失効などで法律関係が混乱するのを防ぐ
夫婦やきょうだいが一緒に遺言を書く場合であっても、遺言書は別々に作成する必要があります。
各自が遺言書を作成し、同一の封筒に入れておくことは問題ありません。
遺言自由の原則
遺言をするかしないか、遺言を変更するかしないか、遺言を撤回するかしないかは、遺言者が自由に決められます。
また、遺言者は遺産の処分について自由に決められます。
ただし遺産の処分については民法上、一定の制限が加えられています。
- 遺言で相続人を作ることはできない
- 遺言での相続人の廃除には一定の理由が必要
- 一定の相続人には遺留分が保障されている
同時存在の原則
遺言者と相続人は、遺言者が亡くなる瞬間、ともに存在していなければならないという原則です。
相続人が、遺言者よりも先に死亡した場合、あるいは事故などで遺言者と同時に死亡した場合、その相続人へ財産を残すとした遺言は無効となります。
同時存在の原則が問題となるケース
- 胎児・・・遺言作成時に懐胎されている必要はないが、遺言者の死亡時には胎児として存在していなければならない
- 会社・・・遺言作成時には設立手続の前でもよいが、遺言者の死亡時には設立中の会社として存在していなければならない
- 代襲相続人・・・遺言作成時には代襲相続人でなくてもよいが、遺言者の死亡時には被代襲者の子または胎児として存在していなければならない